島根大学医学部内科学講座  血液・腫瘍内科学 教授  鈴木律朗

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 当科では大学病院で、すべての血液疾患の診療を行っています。血液の中には赤血球・白血球・血小板という3種類の細胞があり、このため血液疾患は貧血などの赤血球疾患、白血病やリンパ腫などの白血球疾患、血小板減少症や血友病などの出血凝固疾患に分かれます。それぞれの疾患に応じた医療が必要になり、内服薬による治療から骨髄移植などの造血幹細胞移植まで、さまざまな治療法があります。

すべての治療を地域の皆様へ

 島根大学医学部附属病院血液内科では、高度医療を含めた日本で実施可能なすべての医療を地域の皆様にお届けすることを目指しています。1993年より開始した造血幹細胞移植は、これまでに約300件を実施していますが、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植のいずれにも対応しており、非血縁者間移植を含めたすべての移植を実施できる日本造血細胞移植学会の「カテゴリー1」認定施設となっています。

 2017年からは、間葉系幹細胞を用いた移植後GVHDに対する細胞治療を開始しています。本邦ではこのほかの細胞治療として、2019年に認可されたキメラ抗原受容体改変T細胞(CAR-T細胞)療法があります。島根大学病院では、中四国では2施設目となるこのCAR-T細胞治療施設認定の取得を目指しており、2021年夏頃には実施可能になる予定です。

 他にも小児科および臨床検査部と共同で、島根大学病院でしか実施できない造血器腫瘍遺伝子検査の整備・拡充を続けています。

抗がん剤は、血液内科医のメスである

 白血病やリンパ腫といった血液腫瘍は、疾患の特性上手術などの処置で取り除くことはできません。その代わり、殺細胞抗がん剤や抗体製剤、分子標的治療薬といった薬剤に対する感受性が高い疾患です。全身に広がっている場合でも、寛解(検査で腫瘍が見つからない状態)から治癒を期待できます。我々血液内科医は、外科医がメスを使うようにこうした薬剤を駆使して、血液腫瘍の治療を行います。そのためには、薬剤をどれくらいの量、どのように使うか、またいつ使うかが重要で、これらを十分知っていることが重要です。こうした薬剤には副作用もつきものですが、それを理解した上で最適な治療を実施することが我々の責務です。当科では多数の治療経験数があり、患者さん各々に最適な治療法を提供します。

有能な血液内科医の育成をめざして

 近年はこうした薬剤に加えて、前述のように造血幹細胞移植やCAR-T細胞治療などの免疫細胞療法も実施されるようになってきました。抗がん剤、抗体製剤、分子標的治療薬に加えて、血液内科医は新たな第4のメスを手に入れたわけですが、新規治療ではこれまでは見られなかったサイトカイン放出症候群(CRS)や免疫関連有害事象(irAE)という新たな合併症を認めることがあります。これらに対応するための全身管理能力も血液内科医には求められています。我々は教育にも力を入れており、どのような血液疾患治療法にも対応できる血液内科医の育成を目指しています。

 それと同時に、治療成績の向上を目指した医学研究にも取り組んでおり、島根から世界への情報発信も目指しています。

 

島根大学医学部内科学講座

血液・腫瘍内科学 教授

鈴木律朗